夏雪式のブログ

転生したら世界がカレーだったからアウトドアする。訳がわからないが取り敢えず鶏肉を焼く

世界がスローでいわゆる「ゾーン」×2

お題「これまで生きてきて「死ぬかと思った」瞬間はありますか?身体的なものでも精神的なものでも」

 

建築現場的にはNGなんだろうけど、現場監督初心者の頃

ユニック(クレーン付きのトラック)の後ろにしゃがんで

施工写真を取るための黒板に文字を書いていた夏のある日。

ユニックには「ハンドホール」というでかいコンクリの箱とセットで鉄蓋を積んでいた。(マンホールみたいなやつ)

箱は1m四方で鉄蓋は60cmほどの円盤

休憩時間が終わって職人たちが持ち場に付き始めエンジン音がし始めた。

その時、目の前に居た作業員がみんな

「あ・あ・・・・」ってこっちを見ている。

その視線は俺の方・・の俺の頭上に向いていたので顔をあげると

小さい黒丸があった。

輪郭もはっきりしないし空を見上げてるのに空も見えない。

ぼやけた光の中のぼやけた黒い小さい黒丸。

それは徐々に大きくなってきている

腕で体をかばう体制を取ったけど、徐々に大きくなっていくその黒いものが

黒光りした。

網目のような光り方

そのとき本能的に

「あ、この輝きなんかやばいぞ、なんか記憶にある。

手でかばッてる場合じゃないこれ。」

黒丸はどんどん大きくなってくる。重い体を精一杯動かして飛び跳ねた

さっきまで文字を書いていた黒板はへし折れ

直径60cm重さ40kgほどの鉄の円盤

バウンドして地面に落ちて転がり

ゴン

と倒れた。

後ろにしゃがんでいた俺がもう居なくなっただろうとハンドホールを吊り上げて下ろそうとしたらしい。

ハンドホールの上に鉄蓋を載せたまま。

そして滑り落ちた鉄蓋が直下の俺めがけて落下

 

避けなかったら後頭部に直撃めでたく脂肪

腕で避けてたら体の前面(顔から腕胸にかけて)骨折重体or後に脂肪

 

加速装置でも付いてるんじゃないかって位の動きで躱したらしく

拍手湧いたけど

「拍手じゃねぇよ」

初めてゾーンを経験した。フィジカルで死にかけた。

「死」がこんにちわしていた。

ぼやけてたのは視覚からの情報処理が追いついてない状態での高速思考だったらしい。

 

2回めのゾーンは同じく真冬の工業地帯の現場。

土曜なのに10時過ぎで俺が最後。しかも外は猛吹雪。

現場事務所の外に仮設トイレがあって用を足してから帰ろうと思った。

ドアを開けて一歩目

雪が凍ってって足を滑らせた。

前のめりに倒れた俺の頭は一直線に便器に向かう。

当時の仮設トイレは「仮設便所」と呼ぶほうがふさわしい汲取式

迫るのは俺の頭がすっぽり入りそうな

豊富にうんこを蓄えた黒い孔

世界がスローになった。

とっさに両手を前に出す。

 

・・このままじゃ水泳の飛び込み選手のように便槽に突っ込んでしまう・・・

 

そう考えた俺は両手を肩幅まで広げた。

これで足を置くスペースに手を付ける。

しかし足置くスペースには

ブルンブルン振り回したちんこから飛び散る飛沫やら

狙いを定める事もせず放尿したやつの池

うんこする時にガス圧で弾けたであろう黒い染み

そこに手のひらをつけ?

 

無理。

 

俺は指を3本にした。

倒れた体を指3本で支えれるのかなんて悩んでる場合じゃない。

出来るか

じゃない。

やるのだ。

 

便所の床に3本の指が接触し次に重力に引っ張られて体が沈むが

気合で上腕前頭筋と背筋を硬直させて耐える。

おそらく中国武術の気功の「硬功」と言うやつ

アニメや漫画で有名な体を鉄のように硬くするアレだ。

その瞬間間違いなく俺はそれを会得した

 

おそらく頭から突っ込んだ場合

土曜の夜中にトイレで頭を打って気絶

工業地帯で誰もいない

しかもホワイトアウトじみた吹雪

フィジカルで脂肪しかねない状況だけど

汲み取り便所に飛び込んだなら

メンタルでめでたく死亡していただろう。

「死」がいらっしゃーィしていた。

 

今生きてるのは偶然の積み重ねです。

たまたま「死」にはち合わせしなかっただけの積み重ね。

生きてることに感謝を。

って白い息を吐いて用を足しながら思いましたね。